素晴らしき日常

高橋優との出会いの曲。
正確には覚えていないけど、たぶん2010年の8月くらい。当時高校3年生。受験勉強真っ盛りの夏休み、休憩がてらYouTube漁ってた時に出会った。(と思う)

第一印象…言葉数多っ!いやそれより覚醒剤とか歌詞に入れちゃって大丈夫?
でもそれ以上に、出だしのフレーズに心を掴まれた。


麗しき国に生まれすこやかに育んで
この上ない程の幸せを僕は知ってて
それでいても尚湧いてくる欲望の数々
「満たされない」「物足りない」何かに腹が立つ

自分が確かに抱いたことのある感情、でもうまく言葉にできない感情、誰に伝えることもない感情。こんなこと思う人が自分以外にもいて、それを見事なまでに表現してくれる。まさに代弁者。驚きと喜び。


失望することばかりさ希望を持って生きていれば

模索しながら傷付いて傷付ける

前を向いて頑張れば頑張るほど上手くいかない現実にぶち当たるし傷も増える。そしてそんな過程で自分も誰かを傷つけたりする。白でも黒でもない色んな色が複雑に混ざり合う。でもそれはきっと希望を持って模索しているからこそ。 「失望することばかりさ希望を持って生きていれば」この語順が好き。希望を持つから失望すると言うとネガティブだけど、入れ替えることで”失望するのはちゃんと希望を持っているからこそ”なんだと前向きに捉えられる気がする。(本人にそんな意図があるかは分からないけど。)


まだ笑うことはできるかい
まだやりたいことはあるかい

まだ歩くことはできるかい
転んでも起き上がれるかい

間違いだらけでいいじゃないか
街が腐りきってていいじゃないか
そこから覗いてる景色は
天国にも地獄にも変えられるよ

直面する現実はすぐには変わらない。困難で残酷な現実がいとも簡単に突きつけられる。でもそれがなんだ。なんにしたって生きている”こんな世界”で。だったら少しでもいいほうへ、自らの力で。自分が見る景色は自分でどうにだって築き上げられる。そのためにまだ頑張れるかい?歩き続けられなくとも、歩き出し続けられるかい?こうしようではなく、できるかい?とただ問いかけてくれるから素直に受け取れる。隣にいるんだけど、自力で立ち上がるのをじっと待ってくれるそんな感覚。

諦めのような投げやりのような、でもやるしかないんだからと前を向く"なんにしたって"。優くんの言葉選びが好きだなぁと思うのはこういう何気ない一言だったりする。

並ぶ言葉は決して明るいものではないのにタイトルは「素晴らしき日常」というのもまた絶妙だなと思う。現状”こんな世界”だけど、それでも希望を捨てずに何度だって立ち上がり手を取り合うことができれば、”素晴らしき日常”が待っているかもしれない。もしかしたらそうやって葛藤する日々こそ”素晴らしき日常”なのかもしれない。


喋るように湧き出るように現実のシビアな部分を飾らず真っ直ぐ表現しながら、それでもほんの少し希望を置いていてくれる。 ふつうもっと抽象的な言葉を選ぶだろうに、オブラートに包む気のまるでない言葉の数々。そんな剥き出しの歌詞に終始衝撃を受けつつ、私の心の居場所を作ってくれた歌。



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こんな歌つくっちゃう人ってどんな人なのか。そう思ってほかの曲もしばらく追っていたけど、こどものうたはもっと牙剥き出しな印象で風刺が強くて苦手に感じたし、福笑いや現実という名の怪物と戦う者たちはいい歌だけど当時はどこかクサいと思ってリピートしなかった。 そして受験生だったからそれ以上深追いもできず。人柄を知っていれば印象はまた変わったんだろうし、今となってはどれも大好きな曲なのに、タイミングというのは不思議。せっかくデビュー直後に出会ってたのになー。

それが5年後どうしようもなく魅了されるなんてこの時はまだ知る由もない。



(メモ書き)
ライブに行くようになって思うのは、間奏の「おういぇいえええーーーーーえええーーーーー」がたまらなく好きだということ。ここだけで泣きそうになるくらい、伸びやかな唄声が胸に突き刺さる。あのビブラートに溺れたい。